光害との戦い、町の灯りをどうしましょう?

私たち天文ファン、特に天体を観察する者に夜の町の明るさは非常にじゃまです。
果てしなく遠い宇宙からやってくる微かな光を天体望遠鏡によって集め、観察する者とって、観察対象より明るい町の灯りは、全てを隠す邪魔者以外の何者でもありません。


田舎に行くと満天の星空、そして、天の川。
都会の夜空にそれはありません。
都会の子供達は、天の川を見たことがあるでしょうか?
実は天文ファンだけの問題ではないように思います。



観念はさておき、さて、どうしましょう?

私のメイン観測地点は、埼玉県朝霞市にある自宅です。
東方面は、東京で、何時でも空は白んでいます。
南方面は、浜崎団地という、14階建て位のマンモス団地があります。その廊下側に面していて廊下の蛍光灯が昼間のように近所を明るく照らしています。
又その屋上には水銀灯が、「これでもか!!」と言った数が下方向のみならず天迄照らしています。
(どうやら自殺防止のために明るくしているそうですが、それでも、駄目なような???)
西方面は、以前は比較的暗かったのですが、志木駅開発と共に「丸井」が出来、対抗する店舗が華やかにライトアップしてしまい、曇りの日などは空がそこだけ、白く浮かび上がってきます。
北方面は、比較的暗い。しかし、遠く浦和・大宮の灯りがやはり見えます。

 


ここの団地の光は、無駄な電気の代表です。「でんこちゃん!!」何とか出来ませんか??


このような環境の下、天体観測(特に望遠鏡を覗いて星雲・銀河・星団・他暗い宇宙を見るとき)においてどのような問題があるでしょう?
現実的に感じたことを上げてみます。

まず前提として、暗い宇宙を覗く場合、次ぎの条件があります。
自然の条件として、夜である。晴れている。月明かりがない。は、当たり前です・・・
次ぎに、人工環境条件として、回りに灯りがない。遠くにも灯りがない。と言うことのなります。

問題の2つの条件がでてきました。
・回りに灯りがない。
・遠くにも灯りがない。


ここで思うのは、遠くの灯りは関係ないんじゃないか?と、普通は考えるでしょう。
しかし、違うのです。遠い空といっても、その空の下には町などがあります。その灯りが果てしない宇宙まで飛んでいってしまうのならば、何の関わりもありません。
が、実際の灯りは、大気に跳ね返り、地上に帰って来るのです。

つまり、晴れているといっても、空気中には、水蒸気や大気汚染によるちり・ガスなど、その日の気象条件により様々な物が空を漂っているのです。
特に日本の場合、気象条件にもよりますが、比較的湿度が高く、空気中の水蒸気が多いのです。

もやっていれば、当然見通しが悪くなります。
感じたことがあるでしょう?晴れた昼間の青空でも、水色の空とか、青い空とか、すっきりしない空とか。
それが夜になり、抜けるような青い空なら、都会でも結構星が見え、透明度のある「星の綺麗な夜」になります。
しかし、少しでも条件が変わると、地上の光の影響が大きく関わってきます。
そこに光が当たると反射して、厚い光の壁が出来上がってしまうのです。



次ぎに、回りにも灯りがない。と言った条件で、当然、頭上が明るければ前記と同じ結果になります。
それと、人間の目の特性で、暗い物体を見ようとするとき、瞳孔が開きます。それは、少ない光りを瞳の面積で補おうと自動的に行われます。
望遠鏡を覗くとき、当然、目の感度を良くするため一生懸命必要量の瞳孔を開こうとします。しかし、外周より光が目に飛び込みますと、反射的に明るさに合わせて瞳孔が閉まり、暗い物が見えなくなります。
そうです、出来る限り、暗い環境の中にいる必要があります。
町中で難しい場合は、暗幕を頭からかぶって望遠鏡を覗くと効果的です。


理屈から言えば、天体観測不可能地域ですね!

さて、その問題を乗り越えて、宇宙と遭遇するために何とか知恵を出したい物です。

簡単な方法は、やはり、暗い山奥に行ってしまえばよいのですが、なかなかそうも行きません。

しかし、現実はやむを得ず、前記のような環境の中で何とか工夫しています。


対策1,道具や方法で工夫する。

結構、何とかなる物です。
<考え方として、高感度にする。そして、不要な光をカットする。>

現在では、デジタルカメラ等を使い撮影する方法で都会からもの凄い写真が撮れます。
しかし、今の私は、直接目で見るリアルな宇宙に凝っていますので、ここではそれを割合させていただきます。


<方法>
道具
出来る限り、宇宙のわずかな光を沢山取り入れるために少しでも口径の大きな望遠鏡を用意します。
それにより、本来見たい対象もかならず手には入っているはずです。
しかし、それははずであって、淡い対象などは実際には見えません。
どういった状態かというと、太陽の前に電球を置いたような状態?
暗いところでは明るい電球も太陽の前では全然見えないって訳です。
どうしましょう?


幸いなことに、夜空を照らす灯りの多くは水銀灯やナトリウム灯などが多くを占めています。
それらを取り除く特殊な光をカットするフィルターが最近結構安くでています。
それを使うことによりかなりの人工光がカットされ、恒星や星雲などの波長が通過します。





これがその光害カットフィルターなのですが、これを望遠鏡に装着すると、最初はただ白い背景がフィルターの効果により暗くなり銀河や星雲だけ白いままそこに姿を現します。

何とも不思議で便利な物でしょう!!
そして、もっと感度を上げるため、お金は2倍かかりますが、望遠鏡を双眼にします。
単眼で覗くのと違い双眼時の場合、自然な見方なのでよりいっそう見にくい物が見えやすくなり効果が上がります。
環境的な部分では、回りから光が射し込まない様に屋根の開く観測室を作り目の位置に灯りがこないようにします。
そうすることにより、市街地でも何とか天体の観測が出来るようになりました。


どれぐらい見えるかは町から見える、星雲星団レポート。朝霞の町でここまで見えた!を、ご覧下さい。


対策2,

長期的な対応としましては、無駄なエネルギーを空に捨てないよう、地道に、世間に訴えて行くしかありません。
「資源を大切に」「使わない灯りは消しましょう」

光から逃げる方法

@光を減らす。=発電所を襲って下さい・・・。

A明かりの種類・・・街灯、ネオンサイン、住居の灯り。=周囲のあかりを避けられるように観測室を作るか、黒布を頭からかぶります。

B空を照らす灯り・・・=パチンコか、改造エアガン!

注1:自己責任で行動をおこして下さい。。わしゃ知りません。(笑)
注2:よい子は@とBをやってはいけません。



対策3,

長い間粘ってくると一つの結論が出ます。
光害は無視して、「見える時に見る」
こういうことになります・・・。

町中でもっとも良く星が見えるのはどんなときでしょう?

「冬の星空はきれい!」
まさにこれにつきます。

考えてみますと、何もない宇宙に向かって地球上からいくら光を出したって戻ってくることはありません。
なのに光害がある。
そこなんです。

大気が光を地上に戻しているから、光害が発生しているのです。
これじゃあどうしようもないのですが、大気が反射しない条件を狙うことが可能です。

上空の水蒸気が少ないと光が戻ってきません。スモッグや黄砂などもあります。
だから、冬場の透き通った空の下では星かきれいに見えます。
そこがねらい目でしょう!

空が澄んでいる時は、埼玉県の町中でも肉眼で昴が6個位見えます。
シュワルツ120ツインのフィルターで網状星雲をきっちりと見たこともあります。

どんなときでしょう!
昼間の空で大体判断できますね。
青が深い青空=この状態が夜まで続けば良い空に出会えます。
関東では冬場北風が強く凍えるようなキンキンの空です。
偏西風が強いのでシーイングは悪いのですが、空は暗く銀河を見ることが可能です。
M天体などの大型の物は良く見えますが、小さい銀河はメロメロになりますので、出来れば口径の大きい屈折アポが理想です。

夏場でフェーン現象が起きた時は、大型のドブで素晴らしい空を町から堪能出来ますね。
高気圧の周辺で関東では西風です。


水色の空=星は見えるのですが、光の反射が強く星雲は見えにくくなります。
良くある晴れ状態です。
しかし、もっとも歯がゆい状態なので、あっさりあきらめるか、山へ行って下さい。
たまに深夜良い空になっていたりして苛々する場合、自宅からお気軽観望できる準備だけはしましょう。


白っぽい空=良いところ2等星がやっとで星見はあきらめです。
星雲星団は無理ですが、以外とシーイングが良いので惑星には向いています。
光害に負けない惑星が見時でしたら、じっくりと赤道儀を据えておきましょう。


と、まあ、流れに逆らわず、自然体で行くのが極意かと・・。
町での星見は、やはり見える時しかありません。
条件の良い予想を昼間のうちに立てられたら、自宅からのんびり狙うのもなかなか面白いものです。
良い空にあたった時など、ツインの視野にざらざらの天の川が見えることも良くあります。


その条件に合わせた鏡筒と、いくつかのフィルター。
自宅なら眠くなったらそのままベットへ直行できます。
そんな空を探しながらスケッチや記録を残していくのも、また楽しいかと思います。
そのままの情報をネットで流し合ってもまた楽しいでしょう。



しかし、これ程エネルギーを無駄にしていれば、必ず近いうちに”しっぺ返し”が、間違いなく来ることでしょう。
南無・・・・・

2007/03/11最終更新

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