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NERIUS-80LD EMSセミアポ双眼の製作

     

更新2005/8/5 ネリウスが届く
       8/10 仮組み
       8/12 完成!!
       8/19 少々観望。(終了!)
       8/25 接眼部アダプター 
      8/31 昨夜やっと晴れました。
        9/4 観望報告

 

2005/8/3

以前から、20倍程度の倍率で広角の双眼望遠鏡が欲しかった。
市販の選択肢としては、宮内、ビクセン等がある。
しかし、天体用双眼望遠鏡としては対空90°タイプでないとならない。

しかも欲がある。
星像の締まったセミアポ以上で倍率も100倍程度まで十分使える物が良い。

結論としては、プリズムが入り尚且つ2インチサイズの使用できない市販の双眼は選択肢から外れてしまう。
そうこうして数年が経つ。

先日たまたま知人よりEMS-ELの双眼セットを譲り受けていた。
良い鏡筒が手に入ったら念願のアポ双眼を製作する予定でいた。

「武蔵五百」のファインダーに使用している、国際光器が販売していた「SD-80S」と言う鏡筒は非常にシャープな鏡筒である。
が、笠井社長いわく、あれはアクロマートだよ!とのことであった。
しかし、「SD-80S」によるEMS双眼は非常に良い双眼鏡になるだろうと考えていたが、現在もう一本を手に入れることが出来ず又製造元のウィリアムOPからの輸入だとコスト高になり、もう一つの狙いの高橋sky90に手が伸びそうで放置状態となっていた。

そのような中、笠井トレーディングにてNERIUS-80LDが発売された。
ご想像がつくと思うが・・・、あの社長が、「眼視・写真共に色ズレの少ないクリアな像質が得られます。球面収差も非常によく補正されており、200倍を超える過剰倍率でもシャープネスは衰えません。」と、うたう鏡筒である。
SD-80Sより優れた物であると疑う余地は無いと考えざるを得ない。
更に、販売価格も魅力を通り越して驚きであった!税込で48,000円のセミアポ。しかも作りは国産鏡筒より高精度のようである。
シュワルツのときも驚いたが、いよいよアポに近づく足音と言えよう。

しかし、問題は・・・、黒金鏡筒。
黒はいいが、個人的に金は・・・。
我々は、資産を金に変えて所有する習慣が無いためか、どうも、もう少し機械的な輝きの方に魅力を感じる。
そう思うのは私だけかもしれないが、それを除けばあまりにも魅力的な鏡筒なのは確かで、それに気付いてない方も多いのではないか?

と考え(勝手すぎ?)、ロングセラーとなるよう人柱も良いかと・・・。(汗)
そんな時に、「今月の特価品」に10本も出すもんだから、つい反射的に「2本下さい!」と。
行ってしまいました!

しかし、セミアポ2本で86,400円、これは脅威です。
これが宣伝道理の性能だとしたら間違いなく大儲け(表現が変?)でしょ!
少々遊んでみようと思います。


で、早速届きました。

あれれ?四角いダンボール。 2個くっついていた訳ね! 確りとしたソフトケースに収まっています。
EMS-ELと大きさ比較 ドッキング ピントを色々試してみました!
一部バックフォーカスが足り無いため改造を検討。
まずは分解から!
更にクレフォードを外してみます。 ここを20mm短縮が可能です。
勿論旋盤作業前提(汗)

まず。EMSでピントが出るかが、一番の問題。
生憎曇り空、事務所前は100M地点が最大距離。
各2インチアイピースでほとんど合掌。
更に10mm位余裕がある。たぶん無限遠OK
しかし、ここで「ワイドスキャン30mm」だけ×。
いつもこのアイピースの為に鏡筒を20mmぐらい余計につめなきゃあかん。
こいつがなければ無改造なのに、84度の視野に負けてしまいます。

改造可能な方法を探る為、取り合えず鏡筒をばらしてみました。
最も可能性の高い部分は、クレイフォード接眼部と鏡筒をジョイントしているすぺーさーなら短縮加工が可能です。
自分でやるのも大変だから外注に出そうかな?

合掌するようになったら鏡筒スライダーを作りましょ!
今回はちょっとキッチリしたのを作りましょうかね。
どっちにしても一回星を見てから着手です。


2005/8/5
星にて焦点を合わせて見ました。
合掌するアイピース
ケーニッヒ40mm ワイドビュー(笠井)32mm ミードUW14mm ミードUW8.8mm
合掌しないアイピース
ワイドスキャン30mm
と言う事で、焦点が奥にあるワイドスキャン以外は問題ないことが決定!
今回は84度を諦めれば手間のかかる鏡筒改造の必要がなくなるので、そうする事にしました。

ちなみに、アメリカンサイズアイピースは結構根元に焦点があるのでアメリカンサイズ用にEMS自体に取り付けるショートスリーブを製作する予定です。
何なら、ショートスリーブに対応出来るようにワイドスキャンのバレルをカットするのもいいかな?と。


で、目幅調整を如何するかに課題は移ります。
EMSの関係で目幅調整は鏡筒スライド式にするわけですが、たまたま以前に、確かサミットのフリマだったと思いますがベアリング式のスライドレールを手に入れていたのを思い出し引っ張り出してきました。
2つを平行に立てて間に厚みのあるアルミ板をはさみ固定しスライドさせようと思います。
強度不足だったらリニアブッシュで作り直します。

今回使うEMS-ELは視野調整が付いていませんので、鏡筒側で調整する方法を取ります。
上手く行かなかったら、EMSの片側第一ミラーだけシフト出来るように改造します。

  
EMSを装着して並べると最小幅が約130mm
です。最大ピッチはブレの余裕を持たせて1
55mmとします。
スライドレールはこの様な物です。
途中でカットします。
強度が少々心配です。
組み方としてはこんな感じ!
EMSに調整機構が無いのでマウントでの調整を検討。
ダメな場合はEMS-ELを改造します。
まず材料調達です。
昔から付き合いのスクラップ屋さんでアルミの厚板を探します。
10ミリ厚の丁度いいのがありました。
5.5kg1,100円です。
加工をする方は非鉄金属のお店と仲良くなるととてもおトクですよ!
サクッと、少々雑ですがスライドマウントが出来ました。
ビクセンHF経緯台に載せる予定です。
組み上げ 斜めから 正面
接眼部 EMS-EL の横蓋を開けた所 収納時の大きさ
コスモキッズと並べてみました。
めっちゃコンパクトで納得!


2005/8/10 仮組み

作業所へ行ったら材料の在庫が全然ありません。そうでした、武蔵五百の主鏡セルで10mmアルミ板は全部使ってしまったのです。
毎度お世話になっている新井商店で材料の調達をしてきました。
同じずくラップの中に望遠鏡の破片等もあったのでたぶんビクセンさん辺りのスクラップでしょう。


夜なべをして鏡筒スライダーを作りました。

望遠鏡を固定し100m先のアンテナが「テクニカルファーストライト」の対象です。(この言葉はH氏に習ったんだっけ・・)
40mmアイピースで12倍です。
スライドマウントの精度が悪く右側鏡筒が僅かに上向きで像が二重になります。
ワッシャーを噛ませ水平を合わせると何とか像が一致しました。

ここで問題です。
鏡筒の調整にて視軸を合わせ切れません。EMSの像が傾斜しています。左右不均等です。
EMS横蓋を開け第一ミラーを回転させ、像を水平に修正しました。
本来なら、ここで固定して鏡筒で視軸を合わせようと考えていたのですが、それだけでは像の回転に対する調整が出来ないことに気付きました。
EMSの軸を完全に出して固定し、鏡筒で調整するか?鏡筒を固定してEMSで調整するか?
これは後者のほうが将来的にはあきらかに楽です。

しかし、ELの場合見てわかるように少なくとも第一ミラーの稼動マウントを作らなければなりません。
鏡筒スライダーにX-Y調整を作るのも結構細かい作業になるし、そのままHF経緯台には乗らなくなりそうです。。
とても迷う所です。
が、取り合えずEMSは固定で行きます。

EMS双眼の第一印象
電線などを見てもアクロマートのような青にじみは殆ど出ません。
結構期待出来そうデス!


2005/8/12 完成!


やっぱりキャンプにもって行きたくなったのでまたまた夜なべで完成しました。

金物の加工はここまで!
取っ手を付けました。
鏡筒を組み上げ下から見たところ。
左奥の蝶ネジは前後に2個付き横軸調整です。
あっ、勿論ベース板はHFの物。 完成正面 1. 完成正面 2.

つーわけで、結構簡単に完成しました。
時期調整つまみはノブスターを買いに行ったら蝶ネジしかなかったのでそれで間に合わせました。
他は手持ちの小物でまかない完成です。
予算的には、ネジ類が5・600円位、アルミが半分で、中古EMS、鏡筒二本で13万円弱です。HF経緯台はもともと持ってます。
さて、どれほど見えるか楽しみですね!
今晩からキャンプへお出かけですが、生憎の天候で星は見れないかもしれませんが、景色でも見てきます。
使い勝手等確認してみます。

2008/8/19 少々観望

観望アイピース
KONIG40mm 12倍 瞳径6.7mm 実視界5.42度
WS-30mm     16倍 瞳径5mm 実視界5.25度 
  <この中間が欲しい>
UW-14mm     34倍 瞳径2.35mm 実視界2.47度 
UW-8.8mm    55倍 瞳径1.45mm 実視界1.52度
         完成してみると、それほど金メッキの嫌らしさはありませんでした。
コンパクト、シャープ、高級感・・・。
非常に満足のいくものです。
自宅観測室にて

この明るいバックの空の下、星団や重星などとてもコントラストがよくシャープな鏡筒で、EMSがそのままを双眼にしてくれる為、同口径・同価格帯の双眼鏡などと比較する余地はありません。

元々ウィリアムOPのこのタイプは高性能で更に進化したようです!

松本さん、シュワルツのない今、製品化しては如何ですか?

観望の感想を・・、とは思っているのですが、比較すべく同口径のアポクロマートがないため何とも言えないので、あてにならない話として聞いてください。
シャープネス
鏡筒自体が非常にシャープです。
たぶんアクロ8cmF15並み以上かもしれません。F6ですから大したもんです。
恒星は引き締まり明るい空の下でも綺麗に光彩を保ちます。
星の色が濃く見得ます。
重星などはとても綺麗です。
アクロマート8cm双眼鏡は比較する対象ではありません。
上記観測室写真状況で肉眼2等星まで見える状況下で北極星を見ました。
アイピースUW-14mmにて青く小さな伴星が確り見えます。


これは何とも難しい部分です。
55倍で火星を見たところ、極冠などは確り見えピントを少しずらすと黄緑色に像が崩れます。
とてもタイトな変化でピント範囲がまとまっているようです。

それ以上の倍率はアメリカンサイズ用の落とし込みアダプターを作らないとピントが出ませんのでそのうち・・。
十三夜の月では、一瞬とても綺麗で瞳径6.6mm12倍でも明るい表面のクレーターや谷などの模様がはっきり見えます。
微妙に良い色で反射鏡筒との違いがわかります。
目を中心軸から少しずらすと、部分的な周辺に色が出ます。
全周には出ません。
角度により黄緑の色が周辺に出ます。また月を視野の外れまでずらして行くと黄緑が強くなり視野から外れて行きます。
角度により、アクロマート特有の青が僅かに出ます。

中心部で見る限りは殆ど色は出ず、とてもこの値段の鏡筒とは思えないところです。
恒星関係では感じません。
この辺は、セミアポと謳っている微妙な所でしょう。(笑)

私的には、この鏡筒に倍率をかけて惑星など見る気はまったくありませんので、星団などを見たときのコントラストの良さにとても満足しました。
実は以前笠井さんに「武蔵五百」に使用しているウイリアムの8cm単独輸入を相談した時、「高くつくだけだから止めた方が良いよ!」といわれ諦めていた鏡筒のニューバージョンで今回の価格です。
性能面もほぼ判っていたので大満足です。

先日、茨城でまずまずの空の下でも使用しているのですが、あまりのリッチフィールドで具体的な印象は、「この価格でこんなに見える!」な感じで細かい欠点は何も感じなかったのです。特に月も無かったので星団の美しさ以外は、蚊に食われて痒い位の思いだけです。

今の所欠点は、片側のフードが天頂を向けたとき「スー」と下がってくる事ぐらいでしょうか?
鏡筒改造無しでEMSのピントが出て、2インチ低倍率が手に入ったのはラッキーでした!

私的総論としては、この値段でこの作りで、が前提で、低中倍率によるリッチフィールド正立90°双眼望遠鏡は驚異でしょう。
初めてシュワルツEMSツインを作って覗いた時の様な感動がありました。
最も驚きの質は違いますが、自作が可能なら、良いんじゃないでしょうか?

一応終了!


2005/8/25 接眼部アダプター

アメリカンサイズアイピースと、ワイドスキャン30mmのピントが出るようにショートサイズスリーブを作りました。
ワイドスキャンは、バレルも短くしました。

左がショートスリーブ 右がEMS純正 アメリカンサイズピントOK! ワイドスキャン30mmショートバレル
ノーマルのワイドスキャンをカットします → スリーブサイズ20mm 見事にピントが出て84°を楽しめます

毎度のしかし・・・
余計な細工に失敗し、バレル一つをパーにしました。
後日もう一本作り直しです。


2005/8/31 昨夜やっと晴れました。

自宅から久しぶりに観望したような感じです。
気温は随分下がり楽ですね。

WS-30mmでの観望は見事で、16倍・瞳径5mmで5°以上の実視界です。
非常に明るくシャープな視界は天の川の粒々がとても綺麗です。
しかし、5〜60度位から点像が崩れます。
安いアイピースなので仕方の無い所でしょう。

この鏡筒は又、重星など色のコントラストが綺麗です。一個一個の色がとても濃く美しさに見とれてしまいます。
低倍率の星野は、EMSのお陰で「ちょっと違うぜ!」といえるビノになりました。

少々残念な所は、明るい天体、つまり惑星関係は赤に近い色が少しだけ出てしまいます。
月は低倍率ではエッジにホンの僅かですが黄緑がちらちら出ます。
倍率を上げるとエッジの明るい部分に赤み掛かった色が出ます。
それが無ければ見とれてしまうほど良い像なのが残念です。
アイポイントをセンターから少しずらすと消えます。
で、赤系の色なので火星を本格的に見るのは辛い所ですが、ハッキリ言って80mm鏡筒です。
元々倍率的に辛いので却下です。

これは、リッチ・フィールド・テレスコープとしては素晴らしいでしょう。
暗い空の下で見る天の川、メシエなどはとても楽しみになりました。
双眼にしなくとも、ポルタ経緯台等に載せて快適に楽しめるなかなかなサブスコープです。
もちろん、倍率も掛けてアポクロマートと比較しては大人気無いと思いますが。
ただ、色の出ない(惑星以外)対象ならかなり行けるんじゃないでしょうか?

アメリカンサイズのアイピースは半分ほど数ミリ足りずピントが出ませんので、更にアダプターを加工する必要が出てしまいました。
もう一息です。
視軸はカッチリ出る様になりましたが、像の回転を調整できれば更に良くなるので検討課題です。


2005/9/4 観望報告   




昨夜、Ninjaオフ会にとび入りしてきました。
光害はあるもののまずまずの天候でシーイングも良かったので「ネリウス・ビノ」の真価がが判りましたので報告しましょう。

主にWS-30mmにての観望です。
やはり先日の片鱗通りで素晴らしい鏡筒です。
何が?といえばシャープネスと色合いです。
もちろん、私はこのビノにおいて高倍率の惑星を語るつもりはありません。
80mmF6鏡筒で、経緯台仕様が生きる使い方しか致しません。

瞳径5mmでは、光害でバックは結構明るい状態です。
天頂にある網状星雲はフィルター無しで形が判ります。
フィルターをつけるとハッキリ向かい合った形と細かいうねりが見えます。

M31は、5°の視野に全体が余裕で入り写真のような形が判ります。
暗黒部も判り納得の行くものです。もちろん伴星雲もわかります。

M33は、ハッキリ見え導入も簡単です。腕が何と無く判ります。
二重星団は星が多すぎて「ほんとにこれかな?」と、一瞬目を疑う星の絨毯に密度の濃い部分が確認できます。
目を凝らすと、色とりどりの針で突いた様な星の集団がわかります。
素晴らしいシャープネスに驚かされます。

射手座方向は、次から次へと星雲星団がハッキリくっきり飛び込んできます。
細やかな星の中に見える球状星団は非常に濃く、天の川の中で変化がとても楽しいです。

UW-14mmアイピースでは、バックグラウンドが真っ黒になり宇宙空間を漂っているような、少し恐怖感を感じるような世界です。
暗闇に浮かぶ細やかな星々は、それぞれの個性を認識させるすっきりと抜けた星像に色合いを持ちます。
いやー、正解でした!!

実際に、短焦点アポと比較してなんら遜色の無い物で、周辺はかえって上じゃないでしょうか?なんて声も聞こえて来ました。
このぐらいの鏡筒だと、アイピースの方が重要になってくると思います。

作りも良いし、コストパフォーマンスは最高です。
高橋90mmアポ双眼を悩んでいた上での判断でしたので大満足の結果でした。

いやー、社長!久々の3塁打ですね!!
(ホームランかも知れませんが、私はそれほどの目を持っていないので謙虚に言っておきます。)

一応、EMS双眼望遠鏡という事での報告です。

そうそう、ついでに富士の夜景も見てみました。(・・)
シンチレーションも良かったのですが、走る車、看板、信号、街灯など小さな対象もキッチリ見えます。
漁港の海原に映った揺れる街灯が・・、たまりませんね!
きっと昼間に景色を見ても良さそうです。

 

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